更新日 2022.10.11

令和4年度税制改正の投資簿価修正について~グループ通算制度改正~

令和4年度税制改正の投資簿価修正について~グループ通算制度改正~

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 公認会計士・税理士 大谷信介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会 委員

公認会計士・税理士 大谷 信介

令和4年度税制改正投資簿価修正での資産調整勘定対応金額等を加算できる措置について解説します。

当コラムのポイント

  • 投資簿価修正で資産調整勘定対応金額等の加算ができる
  • 連結納税制度からグループ通算制度への移行法人も適用可
  • 一定の場合に最初事業年度終了日までに届出が必要
目次

1.投資簿価修正の税制改正の概要

 通算グループから通算子法人が離脱する場合には、当該離脱する通算法人株式等を保有する法人において投資簿価修正を行う必要があります。連結納税制度における投資簿価修正では、離脱する連結法人の連結期間中の連結個別利益積立金の増減額に相当する金額について当該離脱する連結法人株式等の帳簿価額を調整することとされていましたが、グループ通算制度では、離脱する通算法人株式等の帳簿価額を当該離脱する通算法人の簿価純資産価額と等しくなるように修正することに改組されました。当該制度の下では、株式買収により完全子法人化した際の取得価額に含まれる買収プレミアム相当額が投資簿価修正によって売却時の売却原価に含まれず、譲渡時に損金算入できないデメリットもあるため、令和4年度税制改正において、離脱する通算法人の簿価純資産価額に買収プレミアム相当額である資産調整勘定対応金額等を加えた金額を投資簿価修正後の帳簿価額になるように改正されました。

 具体的に、X1年度末に、簿価純資産 300、時価純資産400 の法人Aを900で買収し(100%)通算グループに加入し、X2年度末に、外部の第3者に900で売却した場合には以下の通りになります。

 加算措置を適用しない場合は、買収時ののれん相当額である500が売却時のA社株式の売却原価に含まれず、離脱時のA社株式売却益は600となります。一方、加算措置を適用した場合には、買収時ののれん相当額が売却原価に含まれるため、A社株式売却益は100となります。

2.制度概要

 通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、その通算子法人株式に係る資産調整勘定対応金額等について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、その計算の基礎となる事項を記載した書類を保存している場合は、離脱時に当該通算子法人株式の帳簿価額とされるその通算子法人の簿価純資産価額にその資産調整勘定対応金額等を加算することができる措置を講じることとされました(法令119の3⑥)。

 資産調整勘定対応金額等とは、離脱する通算子法人の通算開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得した時において、その取得価額(取得株式割合で除して計算した金額)を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額に取得株式数割合を乗じて計算した金額とされています(法令119の3⑦三、四)。簡便的に記載すると、離脱する通算子法人の買収時の取得対価と当該離脱する通算子法人の買収時の時価純資産価額との差額であるのれんまたは負ののれん相当額が資産調整勘定対応金額等に該当することになります。

 特に留意点すべき事項は以下となります。

  • (1) 加算措置の対象となる通算子法人からは、主要な事業が引き続き行われることが見込まれていないことにより通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける法人は除かれます(法令119の3⑥)。
  • (2) 子法人株式の取得が段階的に行われる場合または通算グループ内の複数の法人により行われる場合には、各通算法人の各取得時における資産調整勘定対応金額等の合計額とされます(法令119の3⑥二)。なお、取得時における対象法人の保有割合が低いまたはその取得の時期が古いなどの理由により、その取得の時における資産調整勘定対応金額等の計算が困難な場合には、課税上弊害がない限り、その取得時における資産調整勘定対応金額等を零円とすることができる、とされています(法基通2-3-21の4)。
  • (3 )加算措置の対象となる株式は時価で取得した株式が対象となるため、設立出資や増資により取得した株式は加算措置の対象外になります(法令119の3⑦二)。
  • (4) 離脱する通算子法人を被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人、譲渡法人)とする一定の非適格合併等(非適格合併、非適格分割、非適格現物出資、事業譲渡)が行われた場合には、資産調整勘定対応金額等は零円とされます(法令119の3⑥二、法令119の3⑦三、四)。
  • (5) 通算法人内で適格合併(通算内適格合併)が行われた場合において、被合併法人で資産調整勘定対応金額等がある場合には、合併法人に離脱時に、被合併法人の資産調整勘定対応金額等を加えることができます(法令119の3⑥二)。

3.連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算子法人株式の取り扱い

 連結納税制度からグループ通算制度に移行したグループの連結開始・加入子法人も対象とされており、連結納税制度の適用期間中に自社を合併法人とした連結内適格合併を行っている場合には、連結内適格合併を通算内適格合併とみなして、被合併法人である連結子法人の資産調整勘定対応金額等を合併法人の離脱時の投資簿価修正に加算することができます。ただし、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度終了の日までに、一定の事項を記載した届出書類を所轄の税務署に提出する必要があります(改正法令附則6③)。

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公認会計士・税理士 大谷 信介(おおたに しんすけ)

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